事業アイデアを考えるときに最も大切なことは、その事業の「提供価値」です。
3C(自社・市場・競合)のフレームワークを使って、技術シーズの提供価値の仮説を作成してみましょう。
事業アイデアを考えるときに、「どのような顧客の・どのようなニーズを満たすために・どんな商品を開発するか」までは、よく考えられていると思います。
しかし、お客様の立場で競合商品と比較したときに、「本当にこの商品は選ばれるのか?」と検討してみているでしょうか?
事業の真の提供価値とは、「お客様が他社ではなく自社を選ぶ理由」です。身近な商品の切り花で、技術シーズからどのように提供価値を発想するかを一緒に考えてみましょう。
ガーベラ品種「フルーツケーキ」の開発例
ある日、開発部門から提案が……
過去に勤務していた、花の品種開発をしていた会社でのお話です。ある日、開発部門から、「花粉が出ない画期的ガーベラ品種を開発したので、ぜひ商品化したい」との話がありました。
花粉が出ない? どんなメリットがあるの?
「花粉が出ないとカビにくく流通ロスが少ないです」。
この花粉が出ないガーベラの新品種の提供価値を、3C分析で整理してみましょう。そうするとこうなります。
確かに、独自技術に裏付けられた新製品は、競合優位に市場のニーズを満たしています。けれど提供価値を一言で言えば……
狭いなあ……花屋さんがそれだけで仕入れてくる?
なにか他にもっと良いところはないの?
「花粉が出ない分、長い期間花が楽しめます」。
それだ!!
花屋さんのロスというニーズであれば、保存方法を改善するなど、他の解決手段はいくらでもあります。しかし、ガーベラを部屋で長く楽しみたいというニーズを満たしてくれるとしたらどうでしょうか? お客様の立場に立っても、この商品を選びたくなりませんか?
このように同じ技術シーズからの提案でも、どんな顧客のどんなニーズに向けるかによって提供価値が大きく変わってきます。
事業化を目指して様々なアイデアが出たときに、想定した顧客の立場に立って提供価値を振り返ってみることは重要です。
あなたが提案した提供価値は本当に他の製品や手段より魅力的ですか?
商品コンセプト「ガーベラ フルーツケーキ」
このガーベラは実際に花の生産者や市場、フラワーショップの協力で花持ちの良い製品として発売され、10年以上の差別化製品としてロングセラーになりました。これもかかわった人達が、この製品の提供価値に共感して協力した結果だと思います。